仕事において、効率や生産性を考えない企業は珍しいかもしれません。近代以降様々な仕事が機械に取って代わられており、これまでと同じ仕事であれば増々より少ない人数で事足りるようになっています。その一方で人間にしか出来ない仕事の中でも、誰もが出来るというわけではない難しいものについては、報酬を上げてでも取引が成立するのです。
ビジネスで人が人としての能力を試される場面とは、臨機応変な対応を求められる時です。例えばITエンジニアとしてシステム開発を依頼されるという場面では、答えが一つとは限りません。そしていくつもの可能性を考慮に入れた上で、クライアントの要望に添う最適な答えを提案出来るエンジニアが評価されるのです。そのためまず第一に一つの答えしか思い浮かばないエンジニアであれば、それが常にクライアントにとって最適な答えとなるかどうかは疑問であり、また社内で二人のエンジニアがいつも全く同じ答えを出すとすれば、どちらか一人は用済みになってしまうのです。
ビジネスの場では、「1+1=2」が必ず成り立つというわけではなく、3にも5にもなるといわれます。しかしそのような解答には受験勉強のような効率第一では、逆に辿り着くことが難しく、試行錯誤や回り道が必要となります。自分であれこれと想像を巡らし、どのような場合にどのような手段を使うことが出来るのかと、目の前の仕事には直接関係しなくても研究を重ねておけるだけの好奇心が不可欠です。そうして数多くの引き出しを用意していると、クライアントからの難しい依頼に対しても、どれかがヒットするものです。そしてそのような準備のないエンジニアであれば初めから諦めるところを、新しい手を試すチャンスと捉えることが出来るのです。
しかし、これは具体的に受注した仕事を完成させるという段階に至って初めて、効率が良くて生産性が高い手段を選ぶことが出来るでのしょうが、それ以前の準備に掛ける時間や労力を含めて考えれば、必ずしも効率が良いやり方とは言えません。仕事に活かすことが出来るかどうか分からないような雲を掴むような空想に、時間や労力を費やすぐらいであればそのような仕事は断ってしまう方がよほど効率的かもしれません、しかし誰も思い付かない新しい解決法を提案出来るのと出来ないのとでは、決定的な差になります。そしてそれは、自分自身の成長と共に応用できる範囲が広がります。つまり自分自身の可能性を広げるような試行錯誤が可能になるのであり、例えばエンジニアとしての専門的な知識やスキルに加えて、コミュニケーション能力や経営センスを磨くことで、コンサルタントやプロジェクトマネージャとしての将来を切り開くことが出来るかもしれません。